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シ*ノωノ)バ

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零距離彼女 後編



次の瞬間、私はなにがしかの見えざる力によって吹っ飛ばされ、
その勢いのままふすまを一枚ぶち抜いて、隣の部屋の壁に激突した。

もっともきちんとそう理解したのは、
壁からずるずると崩れ落ち、たっぷり十秒は経ってからだったが。

【   】ゞ゚;)「……えぇぇぇぇー……」

理不尽な衝撃と驚愕が合わさってつぶれたようなうめき声が出てきた。
全身あますところなく痛い。
頭の中では走馬灯の予告編が早くも絶賛公開中だ。
二年前、人生の奈落に突き落とされたと思ったら、その底がまたパカッと開いて
ダブルドッキリ落とし穴になっていたような気分だった。

【   】ゞ゚;)「なんなんだこの人生……
        誰か説明を……せめて何がどうなってるのか説明してくれ……」

床に沈んだ体勢のまま誰にともなくぶつぶつ訴えていると、
ふらり、と貞子が立ち上がったのが見えた。

川д川 「……ちっ。生きてる」

そしてなんか聞き捨てならないことをぼそっと言った。



ぐらぐらと揺れる頭の中で、
どうやら衝撃波のようなもので攻撃されたらしい、と何とか理解はしたが、
しかしまさかリアル人生において『衝撃波』なんて言葉を使用する日がくるとは思わなかった。

すると、腹が立つほど冷静な顔をした祖母が
「オサムさん、よく聞きなさい」と貞子の後ろから言ってきた。

(゙'、`*川 「その昔、大国を治めていた君主と、その国に仕えていた巫女がいたそうです」

【   】ゞ゚;)「この状況で一体何の話ですか……?」

(゙'、`*川 「いいから黙って聞きなさい!
      ――巫女はある日、君主の死と国の衰退を予言しました。
      それは君主の逆鱗に触れ、巫女は殺されました。遺体は井戸に投げ込まれたそうです。
      当然、そんな死に方をした魂が安らかに眠れようはずもなく、
      巫女は強大な霊力そのままに怨霊と化した――」

祖母はよどみなく語り続ける。その間、貞子はじっと私を見つめていた。

(゙'、`*川 「国一つが滅びかけるほどにその憎しみは深かった。
      そんな巫女の荒ぶる魂を静めたのがこの棺桶死家の先祖、棺桶死靖道です!

      ご先祖様は死闘の末みごと怨霊を調伏し、特別な棺に封じ込め、
      この強大にして憐れな恨み、たとえ何代かかろうとも浄化せんと、
      棺ごと巫女の魂を己が一族に託したのです。

      そして――、その怨霊こそ、そこにおられる貞子さんなのです」



【   】ゞ゚;)「な……」

(゙'、`*川 「棺桶死家に生まれた男児は代々、貞子さんを封じた棺桶を肌身離さず持ち歩き、
      その血筋に宿った霊力に常時触れさせることで
      少しずつ浄化をし続けてきたのです。
      それをあなたが引き継ぐときが来たのですよ、オサムさん!」

【   】ゞ゚;)「……そ、……そんな……そんな話信じられnぎゃああああああっ!」

あまりのことに呆然としてしまい、悠長につぶやいていたら
またしても貞子に――もう間違いない。衝撃波なんて馬鹿なものを出しているのはこの貞子だ――吹っ飛ばされた。
私は再び障子をぶち抜き、家の外まで放り出されて、庭の松の木にかなりの勢いで衝突した。

【   】ゞ゚;)「っ、ぐ……、げふっ」

もろに背中から叩きつけられて呼吸が止まる。
ばきばきと嫌な音が聞こたような気がした。
棺桶がどこか破損したのだろう。それとも骨でも折れたのだろうか。

重力に従い、脱力した身体がどさりと落下するのを、貞子はなんでもないような顔で見つめて、

川д川 「信じた?」

信じた。
現実ってたまに人の手に余るから困る。



川д川 「でもほんとうは、この家の男系の血筋は一度、絶えてしまっているでしょう……?」

ゆっくりと庭に下りてきながら貞子が言う。
そういえばそうだ。
男児を儲ける前に祖父が他界してしまったため、
祖父母の子どもは娘――私の母――が一人いるだけで、私の父は婿養子である。

川д川 「だからそのとき、逃れようと思えば逃れられたのよね……。
      何百年も封印されてストレスたまってたし、
      もー国ごと滅ぼしちゃおうかな、とも思ったんだけど」

【   】ゞ゚;)(さらっとすごいこと言った……)

川д川 「トソンちゃんがね」

【   】ゞ゚;)「……え? 母さん? 母とも面識があるんですか……?」

川д川 「あら、だってあなたのお爺さんは……というか、棺桶死家の男はみんなそうだけど、
     十五のときから子どもに跡を継がせるまでずっと私を背負って過ごすのよ」

(゙'、`*川 「私と結婚したときだって棺桶背負ってましたよ。
      もちろんトソンが産まれてからもずっと背負ってました」

【   】ゞ゚;)「えぇ~……ああ……そうなんですか……なんかもうツッ込む気も起きない……」



川д川 「あなたのお母さん、トソンちゃんがね、私に言うの」



(゚、゚トソン ――貞子さん、もう少しだけ、わたしが大人になるまで待っていてもらえませんか

(゚、゚トソン ――まだ棺桶死家の血は途絶えていません。
        もう少ししたらわたしも結婚できる歳になります。そうしたらわたし、男の子を産んで、
        必ずお役目を継いでもらいます

(゚、゚トソン ――戦争なんかに父を取られて、喪って、わたしも悔しい。
        この国に殺された貞子さんの気持ちも、だから痛いほど判ります。
        でも、だからこそ、このまま封を逃れたあなたが怒りのままに振舞って、
        この国に凶事をもたらす処なんて見たくないんです

(゚、゚トソン ――だってこの国にはわたしの好きな人がたくさんいるし、


(゚ー゚トソン ――わたし、貞子さんのことも好きなんですよ




【   】ゞ゚)「……」

私は目を大きく開いて貞子を見た。
厳しい祖母に似ず、穏やかでちょっと天然入ってる母のそんな話を始めて聞いて
驚いたというのもあるのだが、それよりも――

川д川 「棺桶死家の男はともかく……
      私、トソンちゃんのことは好きだったから……だから、待ってあげることにしたの」

私の思考を遮るように貞子は言い、なおも続ける。

川д川 「それから私は頚木もなしに十五年以上待っていた。
      ずぅっとあなたを待っていたのよ。
      この家の、ううん、この国の命運を担うあなたが産まれて、大人になるまで。
      ……だから、ねぇ? もう、いいでしょう?」

ざわり、と不穏な風が通り過ぎていく。

川д川 「術士棺桶死靖道より魂の盟約を受け継いだ唯一の末裔。
      私を縛る最後の血族。
      あなたが死ねば、私は晴れて自由の身となり、この憎き国に復讐できる」



【   】ゞ゚)「……」

私は、ゆっくりと地面から半身を引き剥がし、庭に立つ貞子と正面から向き合った。
ワンピースの裾がはためき、黒髪がざわざわと揺らいでいる。

(゙'、`*川 「事情は大体飲み込めましたか?」

蚊帳の外にいた祖母がいつの間にか近くまで寄ってきていて、
細長いものを私に差し出した。
手にしっくりとなじむ感触。私がいつも練習や試合の時に使っている竹刀だった。

(゙'、`*川 「調伏なんて要は相手を負かせばいいんです。
      剣道の試合だと思いなさい」


この国を守りたければ、そして何より死にたくなければ、これで貞子を倒せということか。



【   】ゞ゚)「……勝手な話ですね」

私は祖母にとも貞子にともつかずそう呟きながら立ち上がった。
多少ふらついたが、竹刀を杖代わりにしてどうにか堪える。

(゙'、`*川 「そうね。私もできればあなたには自分の進みたい道を行って欲しかった」

めずらしく殊勝なことを言う。

(゙'、`*川 「けれど人は皆、大なり小なり、必ず使命を負って生まれてくるものです。
      困難な使命を請け負ったということはつまり、
      あなたがそれを成し遂げられる強い人間であるということなのですよ。
      だからオサムさん、あなたはきっと大丈夫です」

だって、私とあの人の孫ですもの、と祖母は言って、とても優しく微笑んだ。



【   】ゞ゚)「……ずるいなぁ」

そんなことをそんな顔で言われたら、
ああ、まったく、どうにかしなくてはという気持ちにならざるをえないではないか。

もちろん祖母はそういう私の性格を判ってやっているし、
その上で、私なら大丈夫だと、本心からそう思って言っているのである。

【   】ゞ゚)「ずるいですよ」

もう一度、今度は軽い愚痴と諦めを込めて言い、私は竹刀を持ち直した。
痛む身体を無視して姿勢を正す。大丈夫。骨は折れていない。


背筋を伸ばして、深く息を吸い、吐き出す。
それを幾度か繰り返す。
精神統一。
流れ落ちる水が少しずつ細くなり、絹糸のようになめらかに、
それでいて鋼のように途切れることなく、身体の中心を通っていくイメージ。
徐々に感覚が研ぎ澄まされていく。


銃の標準を合わせるように剣先をぴたりと突きつけると、
貞子はほんの少しあごを引いた。



それが合図だったかのように
小型花火が爆発したような音が響き、私に向かって衝撃波が飛んできた。
もちろん、飛んでくるのが目で見えた訳ではなかったが、
集中して正面から見極めるとかろうじて空気の歪みが見て取れたのだ。

竹刀で打ち据えて対抗できるかどうか判らなかったから
私はとっさに身を屈めて斜め横に飛び退き、のけぞるようにして後退した。
それまで私がいた場所に重量のある何かが激突し、地面が爆ぜる。

川д川 「あれ……? かわされちゃった」

貞子がきょとんとした顔で呟く。

私は体勢を立て直し、下腹部に力を入れると、正眼に構え、真正面から貞子を見据えた。
自分が試合中にどんな顔をしているかなんて知らないが、
猛禽類がはるか高みから獲物を睨みつけるような目、と、言われたことがある目だ。

何気なく私の顔を見た貞子はぎくりと肩をこわばらせ、
おそらく、無意識に半歩、後ろへ下がった。



川д川 「……あの……ペニサスちゃん……なんだかさっきと別人みたいなんだけど……?」

(゙'、`*川 「うふふ。竹刀を持つと人が変わるんですこの子」

川д川 「……いやだ。まるであいつみたい。目つきがそっくりじゃない」

(゙'、`*川 「あら、貞子さんもそう思います? やっぱりあの人の孫ですものねぇ」


貞子と、少し離れた処にいる祖母がなにやら会話をしているが、
音量の小さな映画が流れているくらいの現実感しかない。
集中すると周りが見えなくなるのだ。

あるのは、己と、剣となった己だけ。


川д川 「……その目、キライよ」

なんだかすねた子どものような口調で貞子が言い、
次の瞬間、またしても爆音が鳴り響いた。



【   】ゞ゚;)「ぐっ……!」

今度のは予想以上に広範囲だったため、うまく避けることが出来なかった。
まともに食らうことだけはどうにか回避したものの、
半身にずしんと叩きつけられたような強烈な衝撃が走る。
倒れそうになったがギリギリの処で踏みとどまった。

貞子は不機嫌そうな顔をして、次の攻撃に移ろうとしている。

【   】ゞ゚;)(次……)

ぜいぜいと乱れる呼吸を整えながら、考える。
汗とも血ともつかないものが頬から首筋に流れ落ちていく。

【   】ゞ゚;)(……次、は、もう、ないな)

あと一度でも攻撃を食らったら、自分の身体はもう動いてくれなくなるだろう。
そうなれば破滅だ。それこそ、いろいろな意味で。

貞子がゆるりと右手を伸ばして掲げ、白い手のひらを私に向けた。

川д川 「……もう、避けちゃだめよ?」

瞬間、身体中の皮膚がぞわりとあわ立つ。
私はほとんど本能的な直感で確信した。今度のは、今までの比ではない。
避けられない!



川д川 「ばいばい」


恐ろしく強大な何かがその言葉とともに放たれた、
と、思われる刹那、私はとっさに後方へ退き、
出来るだけ身体を低く縮めて衝撃波をやりすごす――


――と、見せかけて、一度引いた足を思い切り踏み締め、
そのまま一気に力を爆発させて、矢のように前方へ飛び出した。


川д川 「えっ?」

突然、私が目の前に現れたことに
思考が追いつかなかったのか、貞子がぽかんと口を開ける。

背後で轟音。


【   】ゞ゚)「避けきれないなら、それより早く、懐に飛び込んでしまえばいい」


衝撃波を放っているのは貞子なのだから、
本人の間合いだけはそれこそ絶対に攻撃の当たらない安全地帯だ。
虚をついてそこに滑り込むことさえ出来たなら、もう、攻撃は届かない。



川д川 「あっ……」

貞子はたった一度まばたきするほどの間呆然として、
それをたちまち後悔し、絶望的に静かな声をもらした。

もう遅い。

【   】ゞ゚)「ぁあああああああああああああああッ!!!」


調伏なんてどうしたらいいか判らないし、
自分に霊感があると思ったりしたことすら一度もないが、
とにかく、ありったけの気迫と渾身の力を込めて、私は竹刀を繰り出した。


川;д川 「……――っ……!!!」





…………


【   】ゞ゚)「……」


川;д川 「……! ……!?」


【   】ゞ゚)「……」


川;д川 「? ……え? あれ? ……な……なんで……?」


私が吠えたあたりからぎゅっと身を縮こませ、
硬く目をつぶっていた(らしい、髪の毛でよく見えなかったが)貞子は、
だいぶ時間が経ってからおそるおそる顔を上げて、驚きと困惑の混ざった声を出した。

【   】ゞ゚)「……すみません、お婆さん。やっぱり私には出来ません」

私は貞子の問いには答えず、
静観していた祖母に向かってそう言うと、
震える貞子から2センチほどの距離でぴたりと静止した竹刀をそっと退かし、
身体の力を抜いて構えを解いた。



川;д川 「……な、なんで」

貞子は力が抜けて地面にへたり込み、湿った声で同じことを訊ねた。
動揺して言葉が出てこなくなっているらしい。

【   】ゞ゚)「だって……そんな顔されちゃ、とてもじゃないが打ち込めませんよ」

川;д川 「……へぁ?」

貞子は素っ頓狂な声を上げた。

川;д川 「な、なんなの、その理由。……私、この国を滅ぼすって、
      あなたが憎いから殺す、って、い、言ったでしょ。言ったよね?」

【   】ゞ゚)「ええ、言いましたね」

まあ、それも嘘ではないのだろう。
深い憎しみと恨みがなければ、怨霊なんて何百年もやっていられないと思う。
いや、怨霊には詳しくないが、たぶん。

【   】ゞ゚)「でも、君は、私の母の願いを聞いて、
       黙って十五年以上も待っていてくれたのでしょう?」

川д川 「……それは」

【   】ゞ゚)「それは母のことが好きだからだと君は言った」



人の心など持ち合わせず、ひたすら恨みつらみだけで動いているような、
そんな怨霊相手であれば私は迷わず竹刀を打ち込んでいただろう。

だが、彼女には感情がある。
人と同じように恥じらい、怯え、ちゃんと他人を好きだと言える彼女は、
ほんとうに大切なものまではまだ失っていないのではないか。
私にはそう思えたのだった。

それに――こんなことを言うとマザコンみたいで気恥ずかしいが――、私の母はいい人なのだ。
ちょっとふんわりしすぎているが、決して馬鹿ではなく、人を見る目だけは確かな人なのだ。
そんな母が好意を持ち、信頼して約束を取りつけたということは、
彼女もまた、信頼に応えてくれるだけの良心を持った人であるということだろう。


【   】ゞ゚)「母さんとの約束をちゃんと守ってくれた、貞子、君は優しい子だと思う。
       人間と変わらぬ存在だと、私は思う」

川д川 「……」

【   】ゞ゚)「そんな人相手に打ち込めません」



川д川 「……あなたって……」

貞子はしばらく、そう言ったっきり次の言葉を探していたが、
何を言ったらいいのか判らなくなってしまったらしく、
結局、ぺたんと座ったままの姿勢で、困り果てた猫みたいに私を見上げた。

なんか可愛かったので追い討ちをかけてみた。

【   】ゞ゚)「それに私、年寄りには敬意を払え、女性には絶対手を上げるなと
       祖母にさんざん叩き込まれて育ったものですから、
       そういう可愛らしい仕草をされるとどうにも」

ΣΣ川*д川 「!?? なっ……、か……かっ……!?」

貞子はみるみるうちに真っ赤になり、
口をぱくぱくさせてよく判らないことを口走り始めた。
こうして見るとほんとうに普通の女の子と変わらないのだが、と私は思って、ちょっと笑った。



(゙'、`*川 「はいはい、そこまでー」

ぱんぱん、と手のひらを二、三度叩きながら、祖母がひょいと乱入してきた。

(゙'、`*川 「あなたの負けですね、貞子さん?」

川*д川 「う、うぅぅう」

(゙'、`*川 「あらあら、まあ、そんなにほっぺた赤くして、可愛らしいこと」

祖母は頭を抱える貞子を見てころころ笑い、
それから私の方に向き直って、晴れ晴れとした笑顔を作った。

(゙'、`*川 「いやぁ面白かっ……よくやりましたね、オサムさん」

【   】ゞ゚;)「お婆さんは自分に正直すぎます」

(゙'、`*川 「うふふ、だってまさかこんな形で決着がつくだなんて
      思ってもいなかったんですもの。この天然タラシ」

【   】ゞ゚;)「お婆さん、心の声をストレートに表に出しすぎです!」



祖母は気が済むまで楽しそうに笑った後、私の怪我の具合を確かめて、
骨も内臓もなんとか無事だった私の頑丈さを褒め、
それからさっきはなかなか見事でしたよ、と、剣の腕も褒めてくれた。
めったにないことである。

(゙'、`*川 「さて、それじゃオサムさん、まずは貞子さんを連れて蔵に行ってらっしゃい」

【   】ゞ゚)「蔵?」

(゙'、`*川 「貞子さんを封じるための特別な棺桶がしまってあるのですよ。
      今あなたが背負っているのは、本番前に重さや日常生活に慣れさせるための
      練習用棺桶ですから。まあ補助輪つきの自転車みたいなものです」

【   】ゞ゚;)「……練習用棺桶……」

妙に力の抜ける名前というのはあるものだ。
なんだか一気に疲れが出た。



(゙'、`*川 「さぁさ、貞子さんもいつまでもそんな処に座り込んでないで」

がっくりきている私をよそに祖母は貞子にも声をかける。
貞子はずっと自分の髪の毛を握って引っぱったりしながらうーうー言っていたのだが、
祖母に腕を引かれてようやく立ち上がった。

川*д川 「……」

【   】ゞ゚)「……ええと」

あらためて向かい合うとなんだか決まりが悪い。
私は少々ばつの悪い顔をしながら、いまだに赤い頬をしている貞子に向かって
おもむろに右手を差し出した。

【   】ゞ゚)「何と言うか……これからよろしく。貞子」

川*д川 「……」

貞子は驚いたように私を見て、数秒間視線と両手をさまよわせ、
それでも結局は自分もおずおずと手を出して、
ぎこちなくではあるが、私の手をそっと握ってくれた。

川*д川 「よ……よろしく。……オサム」





さて、それからというもの、
私の生活は劇的は変化を遂げた……かと言えば、実はそうでもなかったりする。

変わったことと言えば、背負う棺桶が艶やかな漆黒の、
表面に十字の切り込み紋様が入ったものになったということ、
そして、その中に先祖伝来の怨霊が入っていることぐらいだ。

もちろん日常会話はするし、始終背負っている訳だから
存在は常に感じているのだが、なんかこう、出不精なのである。この貞子。


【+  】ゞ゚)「なかなか出てこないからたまに君が入っているということを忘れます」

川д川 「……だって、この中、居心地いいんだもの」

【+  】ゞ゚)「何百年も閉じ込められていたのに?」

川*д川 「暗くて、狭くて、ひんやりしてるとこ……好きなの……」

【+  】ゞ゚;)「……ああ、そう」



という訳で、私の周りは前とそんなに変わらない。

母は貞子と久しぶりに会えて喜んでいるし――ただ、父だけは若干貞子を怖がっているようだ。
結婚する時ちょっと脅かされたらしい――、もちろん学校へも背負って行く。
ごく親しい友人を除けば、棺桶をかついだ変人のクラスメイトが
まさか怨霊を背負って登校していることなど、誰一人感知していないだろう。
とりあえずは平穏だ。

そうそう、先日、祖母にこんなことを言われた。


(゙'、`*川 「ああ、そういえばオサムさん、あなたの進路の件ですが」

【+  】ゞ゚)「え? お婆さん、あの時私が大学に行きたいと言ったら
       それは却下だと言っていたじゃないですか」

(゙'、`*川 「まあ、そりゃ、どうしても一般人の大学に
      その棺桶背負って通いたいと言うなら私は止めませんけど」

【+  】ゞ゚)「一般人向けじゃない大学なんてないでしょう」

私がそう言い返すと、ありますよ、と祖母は当たり前のようにさらりと言った。

(゙'、`*川 「この家のような術士の家系の跡継ぎとか、
      霊的な問題を抱えていたりする人が通う国立大学ならありますよ」



【+  】ゞ゚;)「……。え、国?」

(゙'、`*川 「ええ、国がこっそり経営してるんです。表向きは普通の大学ですが、
      陰陽道とか霊媒体質の対処法とかを勉強させてくれるんです。
      この国の霊的職業の需要って意外に高いんですよ。
      まず第一に才能を持った人間が稀ですから」

【+  】ゞ゚;)「……どうしてお婆さんがそんなことを知っているんです?」

(゙'、`*川 「お爺さんが通っていたからです」

川д川 「私も一緒に通ってたわよ……もちろん」

棺桶の中から貞子が口を挟んできた。
ということは、真実この世に存在する大学なのだろう。
国家ぐるみの霊的機関。下手な漫画みたいな話だ。

なんというか、世界にはまだまだ知らない事がいっぱいあるなぁ、
と私は他人事のように思った。
貞子のことがあってから、大抵のことでは驚かなくなったつもりだったのだが。



しかし、祖母に詳しく話を聞いてみると、なかなか良さそうな大学だった。
普通の大学と同じ、一般的なことを教える授業もあるらしい。

(゙'、`*川 「前向きに考えてみる価値はあると思いますよ。
      あそこだったら授業料もほとんどかかりませんし」

【+  】ゞ゚)「ほとんど? どうしてです?」

川д川 「現在進行形で私を封印しているから。
      ……なんかね、国を霊的災害から守っているってことで、
      そういう申請をすると、いろいろ特典つきで特別給金がもらえるんだって。
      私、危険度特Aクラスの悪霊だから……結構いっぱいもらえてたみたいよ」

(゙'、`*川 「でもお爺さんが戦争で死んで、一時封じる人がいなくなってしまったでしょう?
      危ないから捨てて置けないとかで、
      国のお抱え陰陽師が総出で貞子さんを滅しようとしたこともあったんですよ。
      でもあの時貞子さんものすごく不機嫌で、まったく歯が立たなくてねぇ」

川д川 「そうね……トソンちゃんがいなかったら間違いなくこの国滅ぼしてたわね……」

(゙'、`*川 「ええもう、我が子ながらほんとうに肝が据わっているというか何と言うか。
      当時は偉い人がじきじきにお礼を言いに来たりもしてねぇ。
      ――ああ、そういえばそれからですね、給付金の額がどーんと跳ね上がったの」

Σ【+  】ゞ゚;)(だからウチ誰も働いてないのに普通に暮らせてるんだ……!)

こんな処で地味に長年の疑問が氷解してしまった。



川д川 「あの大学、行くの? オサム」

ちょっと棺の蓋をずらし、貞子がひょこりと顔を出しながら言う。
私は首をひねって貞子を見た。
つやつやと黒くて、細く、長く伸びた髪の毛。その奥に隠れた目と目が合う。

【+  】ゞ゚)「そうですね……」

祖父が、こんな風に貞子を背負い、通っていた大学か。
悪くないかもしれない、と私は思った。

【+  】ゞ゚)「一緒に行きますか? 貞子」

と私が言うと、

川д川 「……あなたの行く処なら私はどこでも行くわ。背負われてるんだもの」

と、貞子は無感情に言って、
そっぽを向きながら棺桶の中に引っ込んでしまった。

けれど蓋が完全に閉まるその前に、ほんの一瞬だけ、

川* 川 「ずっと一緒よ」

ともすれば見逃してしまうほどごくわずかな間だけ、
薄桃色に染まった頬を隙間からちらりと覗かせて、ちいさな声でそう言った。




そんな訳で、卒業後には晴れて大学に通えることになりそうである。


不安も大きいが、まあ、どうにかなるだろう。
かつてこの国を震え上がらせた史上最凶の怨霊であり、
ちょっと変わった同居人でもある引っ込み思案な女の子が、
どこまでもついて来てくれるそうだから。

堪えきれずにくつくつ肩を震わせると、
ぴったりと背中に密着した気配が照れているのが判った。


【+  】ゞ゚)「まったく、心強い限りですよ」


私は笑いながら言い、親愛を込めて、棺桶に軽く拳をぶつけた。


ブーン系小説 | 00:20:14 | Trackback(0) | Comments(0)
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